不動産売却を検討している方なら、「仲介」と「買取」という2つの方法を耳にしたことがあるでしょう。しかし、具体的にどのような違いがあり、どちらを選ぶべきか判断に迷う方も多いのではないでしょうか。
本記事では、不動産仲介と不動産買取の基本的な仕組みから、それぞれのメリット・デメリット、向いているケースまで詳しく解説します。最適な売却方法を見つけるための判断材料として、ぜひ参考にしてください。
不動産仲介と買取の基本的な仕組み
不動産売却には大きく分けて「仲介」と「買取」という2つの方法があります。どちらも不動産を現金化する手段ですが、買主や取引の流れが根本的に異なります。まずは、それぞれの基本的な仕組みを理解しましょう。
不動産仲介の仕組み
不動産仲介は、不動産会社が売主と買主の間に立って売買を成立させる方法です。不動産会社は媒介契約を結んだ売主の物件を広告やインターネットで宣伝し、購入希望者を探します。買主は主に個人の方で、実際に住むための住宅購入や投資目的での購入が一般的です。
仲介の場合、不動産会社は売主から仲介手数料を受け取ります。この仲介手数料は宅地建物取引業法により上限が定められており、売買代金が400万円を超える場合は「売買代金×3%+ 6万円+消費税」が上限となります。売主は買主との間で売買契約を締結し、物件の引き渡しを行います。
媒介契約種類には専属専任媒介契約、専任媒介契約、一般媒介契約の3種類があり、それぞれ不動産会社との契約条件が異なります。専属専任媒介契約が最も拘束力が強く、一般媒介契約が最も自由度が高い契約形態です。
不動産買取の仕組み
不動産買取は、不動産会社が直接買主となって物件を購入する方法です。売主は個人間売買のように買主を探す必要がなく、不動産会社と直接売買契約を結びます。買取を行う不動産会社は、購入した物件にリフォームや修繕を施し、再販することで利益を得るビジネスモデルです。
買取の場合、不動産会社は仲介ではなく買主として取引に参加するため、仲介手数料は発生しません。その代わり、不動産会社は再販リフォーム費用や利益を考慮して買取価格を設定するため、一般的に市場価格よりも低い金額での取引となります。
即時買取サービスを提供する会社も多く、査定から契約、決済まで最短数日から1週間程度で完了することも可能です。このスピード感が買取の大きな特徴の一つとなっています。
査定方法の違い
仲介と買取では査定方法も異なります。仲介の場合は市場価格に基づいた査定が行われ、近隣の類似物件の成約事例や市場動向を参考に価格を算出します。一方、買取の場合は再販を前提とした査定となるため、リフォーム費用や再販時の利益を差し引いた価格が提示されます。
売却期間とスピードの違い
不動産売却において、現金化までの期間は重要な検討要素の一つです。仲介と買取では、売却期間に大きな違いがあります。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
仲介での売却期間
仲介による売却では、一般的に3ヶ月から6ヶ月程度の期間を要します。場合によっては1年以上かかることもあり、売却期間の予測が難しいのが特徴です。これは、個人の買主を見つける必要があるためで、物件の魅力や立地条件、価格設定、市場環境によって大きく左右されます。
売却活動中は内覧対応が必要となり、週末や平日の夜間に購入希望者の見学に対応しなければなりません。特に居住中の物件の場合、生活をしながら内覧対応を行う必要があり、精神的な負担も考慮する必要があります。
購入希望者が見つかった後も、買主の住宅ローン審査や既存住宅の売却などの条件が整うまでに時間がかかるため、契約から引き渡しまでには通常1ヶ月から2ヶ月程度の期間が必要です。
買取での売却期間
買取では最短数日から2週間程度で現金化が可能です。不動産会社が直接買主となるため、個人の購入希望者を探す必要がなく、査定から契約、決済まで非常にスムーズに進行します。急いで現金が必要な場合や、期限内に確実に売却したい場合には大きなメリットとなります。
内覧対応不要というのも買取の大きな特徴です。一般の購入者向けの広告活動や見学対応が不要なため、プライバシーを重視する方や、忙しくて内覧対応の時間が取れない方にとっては非常に便利です。
ただし、買取価格の査定には数日から1週間程度要する場合があります。物件の状況確認や市場調査、リフォーム費用の算出などを行うためですが、それでも仲介と比較すると圧倒的に対応がスピーディーです。
キャンセルリスクの違い
仲介の場合、契約後でも買主の住宅ローン審査が通らない、転勤がなくなったなどの理由でキャンセルされるリスクがあります。一方、買取の場合は不動産会社が買主となるため、契約後のキャンセルリスクは非常に低く、確実性が高いのが特徴です。
売却価格と費用の比較
不動産売却において、最終的に手元に残る金額は重要な判断基準です。仲介と買取では、売却価格だけでなく、かかる費用も異なります。それぞれの特徴を詳しく比較してみましょう。
売却価格の違い
仲介での売却価格は市場価格に近い金額での成約が期待できます。個人の買主が実際に住むことを前提として購入するため、物件の立地や状態が良ければ査定価格通り、あるいはそれ以上の価格で売却できる可能性もあります。特に人気エリアや希少性の高い物件であれば、複数の購入希望者により価格が上昇することもあります。
市場価格との違いを最小限に抑えるためには、適切な価格設定と効果的な販売活動が重要です。相場よりも高すぎる設定では買主が見つからず、安すぎる設定では損失となってしまいます。
一方で、買取での売却価格は一般的に市場価格の70%から80%程度となることが多いです。これは、不動産会社が再販のためのリフォーム費用、販売活動費用、利益などを考慮して価格を設定するためです。
仲介手数料と諸費用
仲介では仲介手数料が発生しますが、買取では仲介手数料は不要です。仲介手数料は売買代金が400万円を超える場合、「売買代金×3%+ 6万円+消費税」が上限となります。例えば3,000万円の物件の場合、最大105.6万円の仲介手数料が必要となります。
その他の諸費用として、どちらの方法でも印紙税、登記費用、測量費用(必要に応じて)などが発生します。ただし、買取の場合は瑕疵担保責任免除となることが多いため、売却後のトラブルリスクを軽減できます。
仲介の場合は売却活動中の光熱費や清掃費用なども考慮する必要があります。特に空き家の場合でも、内覧対応のために電気や水道を継続する必要があり、維持費用が発生し続けます。
それぞれに向いているケースと選び方
仲介と買取、どちらを選ぶべきかは売主の状況や希望によって異なります。それぞれの方法が適している具体的なケースを理解することで、最適な選択ができるようになります。
仲介が向いているケース
仲介は少しでも高く売りたい方、時間に余裕がある方に適しています。特に立地条件が良い物件や、築年数が浅い物件、人気エリアの物件などは仲介での売却が有利になることが多いです。市場価格に近い金額での売却が期待でき、場合によっては査定価格を上回る成約も可能です。
住み替えを検討している方で、新居の購入時期に柔軟性がある場合も仲介が適しています。売却と購入のタイミングを調整することで、より良い条件での取引が実現できる可能性があります。
また、眺望の良さやリノベーション済みであることなど、物件に特徴的な価値がある場合は、その魅力を理解する買主と出会うことで、適正価格での売却が見込めます。
買取が向いているケース
買取は急いで現金化したい方、期限内に確実に売却したい方に最適です。相続による売却で納税資金が必要な場合、離婚による財産分与で早期の現金化が必要な場合、海外転勤などで確実な売却時期が必要な場合などが該当します。
秘密厳守での売却方法を希望する方にも買取は適しています。近隣に売却を知られたくない場合、広告活動や看板設置なしで売却できる買取は大きなメリットとなります。
築年数が古い物件、修繕が必要な物件、瑕疵のある物件なども買取に向いています。一般の購入者には敬遠されがちな物件でも、再販を前提とした不動産会社であれば積極的に買取を行ってくれる場合があります。
物件種別ごとの適性
マンションの場合、立地や築年数、管理状況によって仲介と買取の向き不向きが決まります。駅近の築浅マンションなら仲介が有利ですが、築古マンションや管理状況に問題がある場合は買取の方がスムーズです。
一戸建ての場合、土地の価値が重要な要素となります。建物の状態が悪くても土地に価値があれば仲介でも売却可能ですが、建て替えやリフォームが前提となる場合は買取業者選びが重要になります。
投資用物件の場合、収益性や立地条件によって判断が分かれます。高い収益性が見込める物件なら仲介で投資家向けに売却し、空室率が高い物件や修繕が必要な物件なら買取を検討するのが一般的です。
ローン残債処理方法による選択
住宅ローンが残っている場合の処理方法も選択の重要な要素です。ローン残債が売却価格を下回る場合(アンダーローン)であれば、どちらの方法でも問題ありませんが、売却価格がローン残債を下回る場合(オーバーローン)は慎重な検討が必要です。
まとめ
不動産仲介と買取は、それぞれ異なる特徴とメリット・デメリットを持つ売却方法です。仲介は市場価格に近い金額での売却が期待できる一方、売却までに時間がかかり、仲介手数料も発生します。買取は売却価格は市場価格より低くなりますが、スピーディーな現金化が可能で、仲介手数料は不要です。
どちらを選ぶべきかは、状況や優先順位によって決まります。高く売りたい場合は仲介を、急いで現金化したい場合は買取を検討するのが基本的な選択基準となります。また、物件の状態や立地条件、市場環境なども重要な判断要素です。
最適な選択をするためには、まず複数の不動産会社から査定を取得し、仲介と買取の両方の条件を比較検討することをお勧めします。


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